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“Metal Hammer”スタジオレポート

Nightwishの過去の4枚のアルバムをもって彼らの全てを知る人たちは、とにかく驚く準備をしておいたほうがいい。ニューアルバム“Once”により、このフィンランドのバンドについて大きく騒がれることになるだろう。リスナーはインディアンの魔法、東洋のサウンド、エレクトロ・ビートを目の当たりにする。キーボーディストで作曲者であるTuomas Holopainenは、ファンとのオープンな対立を探している。

ジャーナリスト達はCENTURY CHILDと比べて重要な変化がニューアルバムにあることに対して、HelsinkiのクラブLooseで小さな呟いている。Tuomas Holopainenはよりハードなギター・サウンド、プログレッシヴな曲の構造、ロックとオーケストラの新しい力関係と言う新しい要素をNightwishに取り入れた。管楽器、弦楽器、ハープはマテリアルの前景に置かれ、リスナーはMetallicaのS&Mを想起する。「違うのは、S&Mのマテリアルはオーケストラのために書かれたものじゃないってことさ」Tuomasは語る。「オーケストラを前景に配置したのは意図的なことだ。11曲のうち9曲がそうだ。でも、ギター、ドラムス、そしてボーカルが重要と言うのは変わっていない。」

オーケストラ・パートはPip Williamsの指揮のもとLondonのPhoenix Studioでレコーディングされた。Tuomasはミュージシャンたちの素晴らしい仕事に驚いた。「全員が全てのパートを2日間で何の問題もなく録りおえたんだ。信じられないよ! 世界で一番優れたミュージシャンだ。とても素晴らしいクオリティでレコードに残せたよ! (微笑)」Tuomasは自身で曲の基本的な骨格を書いた。彼のアイディアは彼とそのバンドメイトによって発展していった。レコーディングはTuomasの監督のもと、バンドのホームタウンKiteeとHelisinkiのFinnvox Studiosで行われた。レコーディング作業には5ヶ月を要した。「以前よりも8週間余計に必要とした。今までで一番大変なレコーディングだったよ。でもとてもいい感触があるんだ。多くのトラックが以前のようなピアノではなく、ギターから生まれた。これがリフがハードになった理由だ」

そしてさらに厳しいこと――ある1曲がNightwishファンはひどい頭痛を覚えるだろう“Wish I had an Angel”だ。コンピューターのビートとコーラス中のRammsteinのリフは、“Electroshocker(電気ショック)”だ。この曲は他の曲とは全く違う。「ファンの50%はこの曲を嫌いになるだろうね(ニヤリ)。でもバンドメンバー全員が今までで最高レベルの曲だって認めてるよ」「この曲が2枚目のシングルになるからね。Rammsteinはお気に入りのバンドなんだ。Nightwishのサウンドに境界線を引こうと思う。ファンが私たちの音楽の行く末を決めるなんて、そんなのはいやだからね。」

さらに“The Siren”と“Creek Mary Blood”の2曲、こうした動機から作られている。“The Siren”の東洋的な影響には驚かされるし、“Creek Mary’s Blood”はLakota族インディアンのミュージシャン、John Two-Hawksを起用している。「インディアンの文化や精神性にはいつも奇妙な誘惑を感じていたんだ。彼は祖先の名誉の下に私が書いた詩を朗読してくれたよ。彼の話す言葉は分からないけれど、彼の翻訳能力に期待している(笑)」

CENTURY CHILDと同様、Marco Hietalaはそのロック・ヴォイスを聴かせてくれる。「たくさんの人が男性/女性ボーカルを期待していたけど、薄氷を踏む思いだよ」「Marcoは3曲をソロで歌い、5曲でバック・ボーカルを担当している。それで充分さ。ONCEはCENTURY CHILDのような明確なコンセプトを持たない。ONCEは独立した11曲の歌なんだ。だからこのアルバムの中に様々な異なった要素を見つけることが出来るんだ。全体的に見て、ONCEはメタルのアルバムじゃなくてサウンドトラックのような音だ。」

The ONCE songs

“Dark Chest of Wonders”

最初のメタルのリフがある一つのことを明らかにする。ギターが過去のどのNightwishのレコードよりもヘヴィになっていると言うことだ。女声クワイアを伴い、Tarjaの深い声が聴けるエネルギッシュな歌。間を挟んで彼女の声はオペラティックな高みに達し、誇大なオーケストラ・パートが姿を現す。

“Wish I had an Angel”

物議を醸している歌! この曲はエレクトロ・ビートで始まる。Marcoがコーラスを歌い、曲はRammsteinにひざまずく。マーチのようなリズムの後、たくさんのクワイアとパワフルでクラシカルなアレンジを迎える。

“Nemo”

1stシングル。素敵なピアノで始まり、ストレートなリズムへと変わる。Tarjaの滑らかなメロディ・ラインも素敵なコーラスになっていく。中間部はとても叙事詩的で気持ちのいいソロがそれに続く。少しHIMを思い出させる。

“Planet Hell”

男性/女性クワイアとバイオリンのオペラティックなイントロが、リスナーに映画音楽を聞いてるような気持ちにさせる。そしてリフは正統派! ボーカルはTarjaとMarcoが交代で取る。全てのボーカルが大規模なクラシック音楽に支えられている。Nightwish流の音楽だ。

“Creek Mary's Blood”

千の湖の国からアメリカの大草原へ。インディアンJohn Two-Hawksのサポートによってフルート、アコースティック・ギター、キーボード、Tarjaの声が入ってくる。曲の最後にはドラムが入ってきて、典型的なロック・バラード調になる。

“The Siren”

バイオリンが重いリフと戦い、やがて緩やかなリズムになる。Tarjaはその声で東洋的な要素を持ち込んでいる。残りのマテリアルへの対位法だ。

“Dead Gardens”

オープニングはPanteraのCowboys from Hell時代のようなリフだが、Tarjaの声はこの曲の前面に出ている。グルーヴィなギターのパートを持つNightwishクラシックだ。

“Romanticide”

Metallicaのようなグルーヴで曲は始まり、リズムとリフはスピードメタルにも手を伸ばす。コーラスは緩やかで、インストゥルメンタルのブリッジはスマートでクラシカルなアレンジで始まる。この曲のボーカルもTarjaとMarcoのローテーション。

“Ghost Love Score”

ドラムスと女声クワイア+管楽器の対決だ。ここにも支配的なオーケストラがある。これはハープが少し入って、ちょっとバラード風。曲の最後には大げさなシンフォニーのよう。もう少し短くても良かったかも。

“Kuolema tekee taitelijan”

フィンランド語のボーカルが入った唯一の曲。このアコースティック・ギターはキャンプファイアにぴったりな雰囲気だ。Tarjaは母国語で歌うのが好きなのだ。とてもメランコリックな曲。

“Higher than Hope”

最後の曲として、感傷的なバラード。曲の始まりは典型的なNightwishの曲。TarjaとMarco、パワフルな演奏でこの曲は爆発的に進む。ハイライト!