'Once' Album Preview

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“Once”アルバム・プレビュー

Article by David Cameron

2004年2月29日の夜、私は幸運なジャーナリストの数少ない一人に選ばれ、北ロンドンにあるPhoenixスタジオで行われたアルバム・プレビューの特別セッションに参加する特権を得ることとなった。そこでは、プレ・ミックス段階の音ではあったが、アルバム“Once”のほぼ全てを聴くことができた。最終的には昨晩の音とは若干異なるものになるだろうから、“プレ・ミックス”であることは強調しておく必要がある。とは言え、Nightwish5枚目のアルバムに何を期待できたか、以下の評論を読んでほしい。

“Once”? なんという名前であろう! このタイトルが明らかになったとき、全体的に皆の意見には相違無いようだった。そして実際のところ、曲のタイトルは短くなるように考え抜かれ、アルバムのタイトルはコマーシャリズムな方向性を漂わせるものだと多くの人は考えた。バンドはリリース時期を最重要視している。しかし、Ewoが私をリスニング・ルームへ連れて行ったとき、それはただの推測に過ぎなかったことが分かった。おそらく今までで最もヘヴィでクランチなリフで、私の耳はいっぱいになってしまった。

では、避けることの出来ない問題にお答えしよう。“Once”はどのようなサウンドなのか? “Century Child パート2”なのか、噂どおり“Oceanborn”の再来なのか。答えは様々な点でNoだ。“Once”はCentury Childから数段上がったところにあり、このバンドは間違いなく今日最も豊富なマテリアルを持ったバンドなのだ。このアルバムの発売が確かにNightwishのものであるならば、本当のファンを落胆させることは絶対にない。このバンドは今までに前例の無いバンドであり、さらに以前よりも叙事詩的で、ヘヴィ、ダーク、感情豊かになっている。私たちが聴かせて貰ったのはプレ・ミックスの曲であったが、このアルバムは今日のNightwishの「全て」を表現したアルバムであることを表している。オーケストラとクワイアによるミックスへの貢献は非常に大きく、リスナーに届く音も四方八方から飛んでくるようだ。

まるでオーケストラに引き寄せられているようだ。The London Session Orchestraは“Once”の11トラック中9トラックにフィーチャーされ、求められる以上に存在感がある。そのサウンドはTuomasがシンセのみで奏でるよりも深く、ある時にはMetallicaのS&Mをもっと磨き上げたバージョンのようであり、またある時にはTarjaの歌声は映画のサントラのようでもある。サントラの影響はNightwishの今まで全てのアルバムで明らかだが、Hans Zimmerの影響を受けたヘヴィ・メタルというよりも、“Once”はさらに数歩進み、部分的には実際の映画音楽に聞こえる。

さて、映画音楽の話ばかりをしていると、このアルバムを聴いていない人は「今回はギターが後部席に押し込められている」とも思いかねない。まず最初に聴いて印象的だったのは、ギター・パートが今までで最もヘヴィであり、おそらくEmppuのプレイもどのアルバムよりも冴えているであろうということだ。数々のリフは非常に幅広く、現代的なサウンドかつ古典的なメタルのリフたちは(もしこう述べる事に意味があるのなら)、シンプルでありエンジン音のようで、ロー・エンドは産業ロックバンドにも少し似たところもある(これは必ずしも悪いことではない)。さらにEmppuの稲妻のようなフィンガー・ワークで始まるパートもいくつかあり、以前の彼よりももっと音楽にフィットしたソロや、メタル・クラシックをしのばせるところもある。

歌は、MarcoとTarja両方がアルバムにフィーチャーされるが、今回のMarcoはバック・ボーカルとして前回よりもフィーチャーされている。また、Tarjaの声を使った実験的な部分もある。これはトラック毎のレビューで紹介する。Marcoが全体的にCentury Childと同様のサウンドを聴かせる一方で、今回のTarjaの声はいくらかストロングに感じる。いつも通りパーフェクトでありながら、以前のアルバムよりも、おそらく少しだけではあるがオペラティックではなくなっているかもしれない。また、ベース・ラインも極めてストロングになっていると感じた。私たちが聴いたのはラフ・ミックスなのだろうが、前よりも遥かに顕著であると感じられた。

残念ではあるが、何らかの理由でこのアルバムの中のドラムについてはあまり大きな違いを聞き取ることが出来なかったように思う。とはいえ、Jukkaは今までと同様に素晴らしいビートと広範囲なスタイルでもってプレイし続けている。

それでは詳細を。トラック毎に、今度のアルバムで期待されるべきプレビューである(最初の曲はプレイされなかったが)。遺憾ながらどのトラックが何だったのか若干の混乱があるが、名前を記したものは正しいものであると信じられたい。アルバムには11トラック収録され、将来は残り3曲がボーナストラックやシングルのカップリングとして収録される。

Higher than hope

この曲は静かなアコースティック・ギターのイントロで始まり、そしてMarcoの強烈なベースラインとTuomasの雰囲気たっぷりのキーボードが一体となって私たちを襲う。ここでは、クラシカルで柔らかなヴァース、ヘヴィなコーラスというオプションが取られ、コーラスは非常に卓越したバック・ボーカル(主にMarco)がTarjaに敬意を表する。ヴァース、コーラスが2回続いたあと、柔らかなキーボードパートが私たちを迎え、ヴァースが語られ、最後に私たちは非常に深遠なサウンドのリフへ導かれる。しかしながらこれで終わりではなく、すべてが静かになったあと、バンドは最後のコーラスに飛び込んでいく。

Planet Hell

Nightwishとしては数少ない怒りの曲であり、チューン・ダウンしたギターとヘヴィなオーケストラが一緒になっている。合唱、クラシカルなイントの後ヘヴィなギターとオーケストラが入ってくる(ここでのオーケストラは非常にはっきりと現れている)。そしてMarcoの歌が頂上に登り詰めるのを聴くことができるだろう。その間キーボードは全体の雰囲気を作り続ける。ローエンドは極めて強調された位置を占め、Jukkaは最高のダブルペースペダルを踏む。私は何度かキーボードとギターのパワーコードがChildren of Bodomスタイルであるかもしれないとさえ感じた。Tarjaの歌はおそらく全くオペラティックではない、というよりも非常に優れたポップ・シンガーのようであり、ストロングに聴こえる。

Romanticide

Emppuは曲の始めからそのクラシカルで「昔風の」とも言えるギター・リフで重要な部分を占める(結局、雰囲気あふれるキーボードにバックアップされているのだが)。しばらく経ち、ヘヴィなエンジン・セクション(私がこのアルバムでしばしば見つけることの出来る共通の特徴だ)が入ってきて、そして今日までで最も確かなEmppuのソロを聴くことができる。湯気も出そうなフィンガリングはIron Maidenの曲の中にあってもおかしくない。そして奇妙なことが起こる。MacroとTarjaのほとんど語りのようなパートが入ってくるのだ。これはNightwishのレコーディングとしては今までに絶対に有り得なかった事だと言える!

この曲で感じたひとつは、例えばDimmu Borgirのような「シンフォニック・ブラック・メタル」といくらか共通性があるパートがあるということだ。

Wish I Had An Angel

明らかにシングル向きの曲で、初めはCentury Child収録のEver Dreamを彷彿とさせたが、最後にはSlaying the Dreamerのほうが少しだけ似ているかもしれないと感じ始めた。

まだ未完成ではあるが、まずTarjaの歌うヴァースに切り込んでくるギターのリフ、そしてMarcoの歌うコーラスにはすぐにぶちのめされる。歌詞を抜粋するが、‘Burning Angel Wings to Dust’(「天使の羽が燃え落ちる」)、‘I wish I had an angel tonight’(「今夜天使が一緒ならいいのに」)とある。非常にシンプルな曲で、この夏のツアーでファイヴァリットになるのは間違いないところだ。

Ghost Love Score

曲が始まって数秒で私の鼓膜は破れそうになり、何が起こるかを悟った。率直に言って、今日までのNightwishで最も叙事詩的な一編だろう。Beauty of the Beastが映画音楽のようだと思ったかい? そうではなかった! リスニング・ルームに座っていると、誰かが「タイタニック」のDVDのスイッチを入れるのを待つところだったよ! この曲はNightwishが今までにリリースしたどの曲よりも進化した曲だと感じたし、この曲は正真正銘映画も取り上げることが出来たであろう。

オーケストラが最も使用され、終始その役割を果たす。イントロでオーケストラはTarjaの歌声とJukkaの軽いリズムを伴い、最上のものになっている。そして爆発的なオーケストラとギターが我々を出迎え、突然テンポがスローになりベースとキーボードがヴァースをドライブし始める。コーラスは非常にヘヴィなクワイアをフィーチャーし、Trisaniaのボーカル・パートにも幾分似ている。

この(いい意味で)長い曲はエモーショナルで静かなパートとリラックスしたソロをフィーチャーして進み、再度取って代わるようにオーケストラが戦い始める。そして、多層に彩られた、Tarjaの歌声が支配する全ての楽器パートという豊富な音が、我々を歓迎してくれる。海という伝統的なNightwishのテーマを保つ歌詞を抜粋する。'The Siren from the deep sang to me’(「大海原のセイレーンがわたしに歌いかけた」)

Creek Mary's Blood

オーケストラが非常にヘヴィにフィーチャーされた曲で、より雰囲気のある感じではあるが、Angels Fall First収録のアコースティックな曲にも似た感じのオープニング。ここでのアコースティック・ギターは明白に打ち出されている。2番のヴァースはそれまでを蹴破って極めてエモーショナルなコーラスを築くが、曲全体はスローでバラードのようだ。アルバムに対するクラシック・ロック・ギターの影響が調和して、ソロは初期のDire Straitsのアルバムにあったとしても場違いにはならないだろう!

全体的にはオーケストラの感触があるものの、伝統的なNightwishの歌である。

Dark Chest of Wonders

初めて聴いたときに頭に浮かんだのは「Tarot」。オープニングのヘヴィなリフはMacroが参加するそのバンドに本当に良く似ていて、これに調和するベース・ラインは極めて強力だ。しかしこのトラックにおけるギターのミックスは少々ラフだったが、これは後にレコーディングしたクワイアのレコーディングを見たことで分かる。そう、この曲はまだ完全なものではないのだ。しかしこれは間違いなくNightwishの曲であり、分かりやすいsing-alongなメロディを持っている。確かにこの後数時間は曲のメロディが頭の中にいた! ひょっとすると、次のシングルの候補?

9曲目(ボーナストラック?)

これはアルバム収録曲のうち最初に聞いたピアノが入った曲で、最初からかなり静かな歌だった。どちらかと言うと奇異な動きを見せるが、Tarjaの声はここではむしろかなり実験的なもので、ヴァースはしばしばKate Bushを思わせる声になっている。しかしここで聴くことができるのはもっと伝統的なロック・バラード風のコーラスだ。ボーカルが実験的なものにも関わらず、これがアルバム中のたった2つの弱点のうちの1つだと分かった。

10曲目(ボーナストラック?)

一直線に魅力的な、ハッピーなイントロは、もうお分かりであろう「Nightwishエンジン」に取って代わるものだ。曲全体は程よいペースで駆け、最初のほうは非常に聴き易い。しかし個人的に感じたのは、このコーラスはキャッチーで自然なイントロのリフの期待に答えていないこと、ソロがいささか期待外れであったことだ。繰り返すが、このCDにおける弱点の1つである(もっとも、ボーナストラックのうちの1曲という可能性も頭にはある)。

Kuolema Tekee Taiteilijan

これはNightwishの母国語で歌われる曲ということで、Angels Fall Firstのアコースティック・ナンバーが思い起こされることだろう。しかしながら、バックの演奏がアコースティック・ギター以上にオーケストラとキーボードによるので、少なくとも現在のところはそれら昔の曲とは全く異なるものだ。心地よくリラックスできる曲。

Nemo

アルバムからの最初のシングルであるこの曲は、まずピアノ・パートがリードし、突如ベース、ドラム、Tarja(の声)が飛び込んでくる。シンプルなギターはここでは非常に小さくミックスされており、特に(再度他の曲との比較ではあるが)キーボードが全体的な役割を大きく担っている。しかしポイントはEmppuのギターがどこからともなく、といった感じで始まるところだ! 曲全体がキーボードが包まれている一方で、他の楽器もまたキーボードを包んでいる。非常に聴き易く、これもまたシングル向きである。歌詞を抜粋'Nemo, my name forever more'(「Nemo、更なる永遠の私の名前」)

13曲目

音楽と歌、明らかに両方とも非常に東洋的な曲。これはバンドがTarjaの声を実験的に使ったもう1つの曲だ。ディープでローエンドなリフの後、曲はバラードのようになり、東洋的なサウンドのキーボード共にギャロップしたようなリフに戻っていく。コード進行が非常に耳に心地よく、相対的には単純な曲であるにも拘らず非常にエモーショナルな部分となっている。

Where Were You Last Night (カバー曲)

この曲の最初のコード共にスピーカーからチャイムが鳴り響き、bemusementのような見た目は彼ら全ての現在の表情に表れた。Nightwishは本当にBon Joviのカバーをしたことがない? まあ、実際していない。これがどうやらフィンランドのテクノとしてよく知られたカバーとして間違っているのだとしてもだ。これが理解できた人がいたとも思えないが。既に述べたとおり、Bon Jovi様、コードはカバー・バージョンをベースにしている。聞く分にはいいもので、ボーナス・トラックとしてなら、充分価値はあるのだろう。

Oceanborn - The Nightwish UK Fanclub