Interview with Tarja Turunen and Lauri Ylönen

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Tarja Turunen & Lauri Ylönenインタビュー(2005年10月)

Tarja Turunen & Lauri Ylonen

NightwishのボーカリストTarja TurunenがThe RasmusのフロントマンLauri Ylönenと数年来の知り合いであると知る人はいなかったろう。私たちはGrand Helsinki Hotelの会議室に入り、我々Rock Sounds誌のスナッパーはフィンランドの二大スターの寛容さを試し始めた。まずLauriにバラをくわえさせ、TarjaにはLauriに体を預けるように言い、Tarjaの体をクラシックのワルツのように背中へ傾けさせるのだ。彼女は当然のように疑いの目をしていたが、Lauriは突然熱意を見せ始めた。ついにTarjaは同意し、試しに小さなフロントマンは背中を傾けた。「落とさないで!」

実際はこの二人のキャリアは8年の間並走してきたとはいえ、その頃に1度会ったきりである。両バンドはフィンランドで成功し、いまや全世界をも飲み込もうとしている。しかしながらごく最近までフィンランドのロックが国外で人気を得るという発想は聞いたこともなかった。

「とても不可能なことと思えたよ」部屋の奥にある長い光沢のあるテーブルに着きながらLauriは同意した。「でも俺たちがまだ若くてアホだった頃は、ただがむしゃらに走ろうとしていただけだった。レコード会社も『フィンランドでもっとアルバムを売りたいならフィンランド語で歌え』って言ってきたしね。だから音楽業界からのサポートはなく、フィンランド国外には音楽業界はない、何度もそう思わせられたよ」

「フィンランドのバンドというのはそれほど多くない。みんなポップスやIron Maidenのような外国のバンドを聞いて育つの」とTarjaは言う。「私たちは2ndアルバムから始まった。でも音楽性がヘヴィ・メタルだったこともあって、これほどの成功を収めるとは全く思っていなかったわ。それも、メタル・キッズの数よりもたくさんアルバムが売れそうな国もあるくらい! 今フィンランドは注目を集める国になっていて、私たちの音楽に何が起こっているのかを知りたがっている。そしてやっと分かってくれるようになってきた。『おい! ロシアの隣のちっぽけな国に俺たちの音楽があるぞ!』ってね」

Dirty Buisiness

月並みな言い方かも知れないが、Tarjaがよく口にする音楽という言葉はほんの少しゴス調だ。それはロシアの東に落ちる暗い影かも知れないし、あるいは長い冬、また魔女やモンスターにまつわるフィンランド神話のせいなのかもしれない。The Rasmusの最新アルバム“Hide From The Sun”は先のアルバム同様のフックがあるが、それと同時に芯は暗い。一方のNightwishはTarjaの驚くべき歌声による悲劇的な魅力と同じくらいオペラへの愛を主張している。

Tarjaは語る「わたしの故郷はロシア国境にすごく近くて、20キロくらいしかなかった。だからいつも影響を受けていて、毎日の生活の中で国境で何が起きているのか、どうなっているのか、そういうことも知っていた。穏やかではなかったな」

何が穏やかでなかったと?

「ダーティ・ビジネス」Tarjaは躊躇いながら答えた。「両国間の汚い仕事、つまり犯罪、ドラッグ、売春のような」

それらがロシアから来ていると?

「大体はね」Lauriがうなずく。「でも他のルートもある。他の北欧諸国とロシアの間の国、例えばスウェーデンもそのルートだ。」

このインタビューはフィンランドのDVD用に撮影されている。彼らが発する言葉は論争の的になる可能性があるため、Tarjaは心配そうに見ている。また、様々な理由で厄介な問題のように思えた。

NightwishもThe Rasmusもフィンランドではよく知られた存在であり、最近はフィンランドへの経済的貢献により政府に賞賛されさえしている。恐らくこのような状況があるため彼らは言葉を注意せざるを得ないのだ。

以前Tarjaは、クラシック・ピアノを学んでいた多感な少女時代に学校で受けたいじめ体験をRock Soundに話してくれたが、どうやらそれも彼女にとっては話すのが難しいことのようだ。

「それはどちらかと言えば……うーん! 大変な話題ね」Tarjaは芝居がかったうめき声を上げた。「同じことを訊いてきた地方紙があったけど、わたしは話したくないと思った。同じようにここでは話せない!」

みんなの目がカメラにいき、ばつの悪い空気になった。

「俺はいじめを受けたことはないな」とLauri。「俺はいつも少人数のグループで、みんな他の奴らとはルックスも音楽の趣味も違ったから、とても強い絆があった。バンドを作る前から音楽によってひとつになれていたね」

The Rasmusが世界を「愛する人」と「嫌う人」に分けてしまっていたのは、昨年のReading Festivalでボトル投げを喰らったことで分かるように最近の話ではない。

「ずっとそうだったよ」当然のように言う。「今でも忘れないが、プレイし始めた頃に友人に曲を聴かせたら『無理無理、サウンドが80年代だよ!』って言うんだ。でも俺たちは『その通りさ!』って感じだったよ。わざわざそうしたのさ」

「何が違うものを、ってことよね!」Tarjaが同意する。

「悪く思わないで欲しいんだけど」LauriがTarjaに向かって言う「Tarjaのバンドも一緒だよ。好きな人もいるし、『なんだこりゃ』ってひともいるだろ」

「もちろん! カテゴライズをしたがる人ってどんな時にもいる。言ってみればわたしはヘヴィ・メタルを聴いたことがなかったクラシック系の人々を無理矢理連れてきているようなもの。今はみんなNightwishを聴いてくれるし、メタル・フェスティバルやロック・クラブに足を運ぶようになったわ。もちろん初めの頃は、わたしがこの声でこういう音楽で歌うのを聴いて、「いったい何がやりたいの?」って思っていた。新しすぎたのね」

「でもクラシックな部分を確実に保っている。そこがユニークだよね」Lauriが補足する。

「それはわたしが捨てなくない部分。例えば今もわたしはクラシック音楽でツアーをしていて、ファンのみんなが普段行くこともない教会へコンサートのために足を運んでくれる。それが本当に嬉しい」

Burn Baby Burn

Tarja Turunen & Lauri Ylonen

始めの時点では具合が悪かったが、Rock Soundが音楽的仲介に関して要領が悪かったのと同様ながら上手く行き始めたように見える。が、すぐにそれを後悔することになる。二人はお節介なおばちゃんに無理矢理デートさせられているティーンエイジャーのように、ただお互いの顔を見るのであった。

他のバンドで歌ってみたいと思ったことは? The Rasmusのように。

「オファーはいつも受けているし」Tarjaが慎重に答える。「いつもコンタクトを取ってくる。だからどうすればいいか決めなきゃいけないのが本当に大変。将来どうするかとか、望むべき一線をどこに引くべきかとか、そういうのを考えるのが非常に重要になっている。でも、するべきじゃなかったこともしてきたわ!(笑)」

例えば?

「その時バカな選択をしたってことだけど、それは言いたくない!(笑)でもそれらの経験全てが糧になったし、やらなければならないことだったんだと思う」

「いい感触を得る必要があるよね」Lauriがちょっと元気な声で言った。

Rock soundは何が上手く行ったのか考え始める……。

「それは例えば俺たちがApocalypticaとやったときのような場合だ。とても自然だったよ。というのも木の陰からやってくる(と木の周りを回る真似をする)と言うフィンランドの言葉通りだったからね。つまり、『おい、俺たちこのアルバムで歌うぜ、全員で。さあ、やっちゃおう』それだけで上手く行くのさ」

この2つのバンドにはさらに共通性がある。神話や伝説に愛着があることだ。Nightwishの創設者であり、メイン・ソングライターのTuomas Holopainenは指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)の大ファンであり、The Rasmusの“Hide From The Sun”は古代の北欧神話にインスパイアされている。

「俺たちには凄い物語がある。もうゾッとするくらいのだよ」Lauriが語る。

「魔法使いとか!」Tarjaも同意する。「ああー、でもそれは今から勉強しなきゃ。ま、あとでね。でもどっちも学校では教わらないことだよね」

「俺は北欧の歴史書をずっと読んでいるんだ。」Lauriが言う。「新曲のLucifer's Angelは、15~16世紀に魔女を火あぶりにしていた人々の関わり合いを見いだして書いた。俺は彼らがみな普通に素晴らしい人だったんだと考えている。ただ他人を助け、世界を変えようとした。そして俺たちに新しいヴィジョンをもたらしたが、人々は彼らを危険な存在、異常者と見なして殺すほか無かった。俺は今も同じことが起きていると思う。そしてそれは表沙汰になることがない」

人が人を焼き殺すとは思えないけど……

「もちろんそうだけど」彼は同意する「でも誰かが新しいことを思いつくと、人はそれを恐れるだろ」

ではもしあなた達が16世紀に行ってしまったとしたら、魔女のように火あぶりになってしまう?

「うわー(笑)考えておかなくちゃ」Tarjaは笑う。

Lauriは罠を警戒しているようだが、あっさりと「そうは思わない」と答えた。

「でもわたしたちが北の住人であることは確かね。神話とかそういうのは信じたいと思う。木々を抱きしめていて、パワーを得ているって信じたい! そういうのを信じていたいの!」そうTarjaは語る。

木を抱きしめるの?

夢見るような口調でLauriが答える「湖のそばに隣人もいない避暑地を持っていてて、ボートもあるんだ。フィンランドでは珍しくないんだけど」

そこで木を抱きしめるというのは比喩? それとも文字通り抱きしめる?

「自分にとってのリハビリのようなものなんだ」Lauriは質問を避ける。「ツアーが終わるとそこへ行き、10分もすると子供の頃へ戻ってしまう。幼少期はそこで過ごしたからね。全てにおいて安全なところだ。そういう隠れ家を持つのは非常に重要なことだよ」

フィンランド人ほど冷静になれない各国において巨大な存在になっていく……こんな内気な二人のスターにとって、これに対処するのはいよいよ難しいことだ。だがフィンランド以外の国は分かっている。The RasmusもNightwishもこれになれていく必要があると言うことを。

rock sound october issue 77