At times it feels like we've made 75 mins oatmeal in champagne sauce (Soundi)

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新作は75分になるシャンパン・ソース味のオートミールのようなもの (Soundi) (2007年6月)(抄訳)

Tuomas Holopainen は2005年10月以降全く質問に答えようとしなかった。秘密を覆う幕は今年9月末にようやく開き、アルバム“Dark Passion Play”がリリースされようとしている。2007年5月24日、Soundi 誌はヘルシンキ Finnvox Studios にてこのアルバムの制作者である Tuomas Holopainen に質問する機会を得た。

“Dark Passion Play”のリリースはまだ先だが、アルバム自体は明日でも準備OKである。Nightwish のボスは、新しいおもちゃを手に入れた小さな男の子のような気持ちだ。

「巨大な教会を建築するようなものだった」

宗教的な暗喩や言及ではない。だが“Dark Passion Play”で欠くことの出来ない歌は、ユダヤ人クリスチャンのイメージを基礎にしているものもある。アルバムを聴き、歌詞を見れば、例えば“Swanbrook”というシングル“Eva”にも見られた言葉に気付くだろう。

「“Swanbrook”はキリスト教画家 Thomas Kinkade(トーマス・キンケード)の“Heaven On Earth”『地上の楽園』からのアイディア。書店で綺麗なカバーの本を見つけて興味に駆られたんだ。宗教的なトーンがあることに気付いたのは家に帰ってから。宗教が悪いと言うことはないけど、 Swanbrook という言葉が“Eva”にあるのは宗教的理由ではない」

14分に及ぶ“The Poet and the Pendulum”はホラー・ロマンスの父 Edgar Allan Poe(エドガー・アラン・ポー)の小説“The Pit and the Pendulum”『落とし穴と振り子』に由来する。例えば“I hate what I have become”という一節も登場している。

「ここで歌われているテーマは、人生の中で良くない局面を迎えたときに自分の人生の価値をどれだけの人が見出せるのか、と言うことを熟考して生まれた。この曲の最後のパート“Mother & Father”はアルバムで一番好きなところ。無償の愛や支援のことだ。物事が上手く行かないと思っても、実は上手くいっているものなんだ。」

アルバムの曲順も慎重に考えたと言う。“The Poet and the Pendulum”がオープニングに決まったとき、続く3曲は聴きやすい曲となった。

「ミキシングを担当した Mikko Karmila はこの曲に1週間も掛かりきりだった。」

Nightwish のキャプテンはロック・バンドのための曲を作っていることを直視している。

「アルバムではオーケストラとバンドの間に明確な一線がある。自分にとってのオーケストラはめちゃくちゃ凄いシンセサイザーなんだ! これは本当にそう考えていることで、数ある楽器の一つと言うことだ」

「このアルバムと結婚したという感じもあり、シャンパン・ソースのオートミールという気もする」

「今までのアルバムで最もダークな作品で、悲しみがあり、メランコリック。2つのハイライトは“Amaranth”とインストゥルメンタルにあるポジティブな瞬間。他は本当にダーク。少なくとも自分たちの尺度ではね。」

“Once”では最高で 170 トラックが使われたが、今回は 200 を越えている。5.1 チャンネルのミックスも計画されている。

「その価値はあると思う。“Once”の 5.1 チャンネルミックスは商業的なものだったし、数千枚しか売れなかったけど。それにしても、今はホーム・シアターも増えてきてるけど、人は音楽を聴くためにそこへ行くものなんだろうか」

オリジナルの曲だけでなく、元々インストゥルメンタルだったものに Tuomas の歌詞を付けた曲も録音された。

「もう言えるけど、それは Michael Nyman(マイケル・ナイマン)が作曲した“The Piano”『ピアノ・レッスン』のテーマだった(おそらく“The Heart Asks Pleasure First”『楽しみを希う心』)。B面用の曲にするつもりだったけど、リリースする許しが出なかったようだ。家で眠らせておくことにするよ」

The Poet and the Pendulum

この曲は以下の五部作となっている。I - White Lands Of Empathica、II - Hope、III - The Pacific、IV - Dark Passion Play、V - Mother & Father

壮大な交響曲的なイントロ、運命の時が刻まれる。アルバムの第一声は“The end. The songwriter's dead. The blade fell upon him”と始まる。

「2005年は最悪の年で、この悪い感情を全てこの曲に込めた。この歌は次のようなスピーチで頂点を迎える“Today in the year of our Lord 2005, Tuomas was called from the cares of the world”自分の名前が入っているのは自己満足みたいなものだけど、こうすべきだったんだ」

「本当に暗い歌詞が入っていて、Marco がこう叫ぶ“spitting on a grave, masturbating on a grave and so on”」

「とてつもなく強い感情が自分の中にあって、その全てを自分の思い通りに発散させる必要があった。ボーイ・ソプラノ用の詞は最初はざっくりと書いたんだけど、そうすると合唱のリーダーからブーメランのように帰ってきたんだ。彼からのメールは、『エクソシスト』の続篇を作るつもりはありません、というものだった」

「アルバムのタイトルは“The Poet and the Pendulum”になりそうだったけど、気が変わった。アルバム中の曲名を挙げても上手く行かないと思ったんだ。“Dark Passion Play”は上手くできたダブル・ミーニングだよ」

Bye Bye Beautiful

力強いコーラスを持った、いつもらしい Nightwish の歌。前曲が Tuomas についての歌であるならば、これは Tarja Turunen についての歌。

「芸術家の行いは、その人の本当の人生を常に反映する。このアルバムにはそのことを主題に書いた3曲がある。“The Poet……”とこの曲、そして“Master Passion Greed”だ。Bye Bye Beautiful は“Wish I Had An Angel”の姉妹曲みたいなものだよ」

「これ以上は語りたくない。普段から自分の詞をオープンにはしてないし、特にこの曲はそうしておきたい」

Amaranth

初めてリフで成り立っている曲。綺麗にテンポが半分になる荒々しい部分があって、最後の転調は禁じ手だ。

「音楽業界で一番イヤなのがシングルを選ぶこと。あ……別に一番じゃないな……とにかくイライラするんだ。1時間の音楽を切り分けてトレイに乗せるなんて嬉しいことではない。アルバムにとってもシングルにとってもファンにとっても間違ってることだ」

「この曲には逸話があって、実はレコーディングが終わってしばらくアルバムからドロップされていたんだ。優れた部分がないと思ってたからね。とんでもないシンデレラ・ストーリーだよ。候補のビリからシングルにまでなったんだ」

Cadence Of Her Last Breath

ここで初めてギター・ソロが登場する。“Save one breath for me”や“Save one death for me”という言葉が並び、スローガンをシャツに書くためにあつらえたかのようだ。

「とてもパーソナルな曲だから、他人には理解されないかも知れない。ここにあるのは逃亡だ。そしてぶつかり、恋に落ち、再び走る。このアルバムで一番早く完成した曲だ」

「デモを聞いたとき、これがファースト・シングルだと思ったかも知れない。確かにこれは候補だった。他のメンバーはこの曲を気に入ってた。いい曲だとは思うけど、フェイバリットではないんだ」

Master Passion Greed

スピード・メタルのリフと、部族的なパーカッション。“Hey Judas, your Christess was our love”という一節がある。イラストには炎に包まれた女性が描かれ、上には操り人形を動かす手が見える。

「音楽的には今までで一番ヘヴィな曲。この曲はキーボードではなくギターで書いた」

「もともとは Anette と Marco が半分ずつ歌う予定だった。でもこの歌詞を見た彼は僕のところへやってきて、うぬぼれるわけじゃないけど俺一人で全部歌った方がよくなるんじゃないか、って言ったんだ。Marco は正しかったよ。新しいシンガーがこの詞を歌うのはフェアじゃないかも知れないし。」

Eva

この曲は既にリリースされているのであれこれ書くことはしない。だが歌詞についてはどうか。

「学校でいじめられている少女についての内容だと分かれば、この歌は素直なバラッドとしてオープンなものになる。このストーリーについては、彼女の運命をわざとオープンなままにしておいた」

「アルバム全曲の中から象徴する1曲を選ぶなら、この曲をシングルとしてリリースする必要があった。14分の曲では駄目だしね。嬉しいことにこの曲を選んだことをみんなが理解してくれた。アルバムの中で最も穏やかでシンプルな歌。」

Sahara

曲の始まりからギターのいいリフが始まるが、驚くことに繰り返されることがない。Nightwish の Kashmir のような曲。

「エジプトの歴史を歌うメタル・バンドほどありきたりなものはないね! フェイバリットの一つだよ。Marco もそう言ってた。歌詞は現実から乖離していて、瞑想の流れるまま。5000年前のエジプトへの逃避的は夢のようなファンタジーだ」

「ヴァースには下部の言葉を入れた。そして男声合唱がケトルドラムと一緒に“Shah!”“Agadaga!”と歌う。かなり歴史的な感覚があるよ。石を引き、足下に砂が流れ、太陽は燃えている」

Whoever Brings the Night

Emppu Vuorinen の曲。弦楽器ツィンバロムなどがビデオブログで触れられていた。巨大な合唱で始まる。イラストレーションは“Dance of the seven veils”『七枚のヴェールの踊り』の準備をしている様子が描かれている。

「ある意味、アルバムの中で一番曖昧な歌。ちょっとした Tim Burton(ティム・バートン)さ。Emppu がデモを持ってきて、その中からリフをピックアップして並べていった。元々の歌のメロディがかなり複雑だったので、ちょっと簡素にした。Anette が歌えなかったってわけじゃないけど、ややこしすぎたんだ。とても好きな曲。詞はエロティックで、とても楽しんで書いたよ」

For the Heart I Once Had

中間で聴けるヘヴィな部分は Tuomas の基本的なテンポで、暴力的な歌である。歌のパートは“Nemo”を思い起こす。

「メロディは“Nemo”に通じるものがあるね、確かに。このアルバムで最も賛否が分かれる曲かも知れない。この歌は脱落寸前だったんだけど、この位置まで来ることが出来た」

「ヘヴィなだけ、あるいはソフトなだけって感じになってしまうものだが、この曲にはその両方がある。アルバムの中で一番の曲ってことじゃないけど」

「同じテンポというのは悪いことじゃない。どの作曲家にもしきたりがある。自分としては最悪のクリシェを避けつつ様々なことに挑戦してきた」

The Islander

Marco Hietala による、ほぼアコースティックの曲。太鼓、木管楽器、イリアンパイプが入っている。イラストレーションはヘミングウェイ“Man and Sea”『老人と海』から。

「もしボーカリストが変わっていなかったら、この曲をシングルとするつもりだった。Marco が殆どを歌ってるのはそのためでもある。数年前にバックステージで Marco がこのケルト風の歌を歌ってて、Tarot に全然合わないって言ってたんだ。これを聴いて灯台守のことが思い浮かんだから、彼が曲を完成させて、私が詞を書いた。」

「ちょっとした哀歌で、孤独な灯台守についての詩。何かの象徴とかではなく、完全にそのままの物語。ライブではアコースティックでプレイするかも知れない。バー・チェアに座ってやるってのは新しいね」

Last of the Wilds

野性的でありながらメランコリックなこの曲は、古のアステリックスの村に入り込んだよう。手製のビールを樽いっぱい飲んでいた時代、今日飲まれるような酒とは違うもの。The Islander のテーマを引き継いでいることは明白だ。

「1000年の時をさかのぼった感覚、酒場のテーブルに飛び乗って古風な楽器を奏で、踊る。フィンランドとアイランドがパーティを組んでいるんだ。酒場の乱闘かも知れないけど。ギター対ヴァイオリン対イリアンパイプってね。そしてフィンランドはCパートのカンテレで勝利を掴もうとする。それはともかく、最後にはみんな友達同士だよ」

「きっとアルバム中で最もポジティブな曲。曲作りの時、ポジティブになれた日があった。楽しく書けたよ。ライブでもプレイするつもりだ」

7 days to the wolves

“The Poet and the Pendulum”や“Master Passion Greed”に並ぶクオリティというのが第一印象。1800年代の詩人 Walt Whitman(ウォルト・ホイットマン)の考え方が歌われる。

「アルバムで一番よく出来たコーラスで、詞は Walt Whitman の匂いが強い。 “Leave the city of fools”、“The road less travelled by”。彼のことは Peter Weir(ピーター・ウィアー)の映画“Dead Poets Society”『いまを生きる』で知ったんだ。Whitman は Edgar Allan Poe(エドガー・アラン・ポー)の次に好きな作家になったよ。“Leaves of Grass”『草の葉』は何度か繰り返し読んでいる」

「詞に込められたメッセージは明確だ。自分たちがここにいるのはただの一度きり、生きると言うことを忘れるな。今を楽しもう! 狼達は常に背後にいる」

Meadows Of Heaven

雰囲気があり、ロマンチックなムードで始まるバラード。だがそのムードに反して数秒ごとに大きく膨らんでいく。ブックレットの絵は Tuomas が子供の時に住んでいた写真を元に書かれている。

「7分半になるスローな曲で、ゴスペル・クワイア、ゴスペル・ソロ、パイプが入っている。アルバムのラストに相応しいとすぐに分かったよ。全てを聴き終わり、74分が過ぎたと思うと、ゴスペル・クワイアが降りかかってくる。アビー・ロードでクワイアを録音したときの暖かい空気は、とても大きなエネルギーを与えてくれた。Jukka なんかは宗教的な人間じゃないのにそんな雰囲気で見つめていたよ。本物の良さが表れていたんだ」

「自分が子供だった頃の歌を書きたいとずっと思ってたけど、なかなか書けないでいた。このテーマにはずっと悩ませられていた。」

Soundi 6 - 7 / 2007