Tarja Turunen: The illuminate vocalist of Nightwish

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Tarja Turunen: Nightwishのボーカリストを照らし出す光 (抄訳)

Intro & Interview by Luxi Lahtinen

Tarja

ONCE――Nightwishの中で最も野心的で最も仰々しいが、今までで最も成熟している。このアルバムは世界中のメタル・ファンの間で2004年最大のアルバムになるだろう。ONCEにおいてバンドは様々な点で冴え渡っているが、このニュー・アルバムで「全てにおいて力強く、全てにおいて大きい」という音楽的不条理を抱えた曲の構成が憂慮される限り、彼らのキャリアがある種の絶頂に達しているかどうか不思議に思う人もいるだろう。

今春のONCEのプレリスニング・セッションにてTuomas Holopainenとディスカスすることが出来たが、私はさらに女性的な見方も望んでいた。これはSpinefarm RecordsのTuula Salminenにより実現し、5月14日HelsinkiのレストランでTarja Turunenと席に着くことが出来た。本当に驚くくらい話し好きで大らかなNightwishのフロント・レディである彼女は、小さなテーブルを挟んで反対側に座った。私はテープ・レコーダーを回し、彼女に質問を投げかけた。

ニュー・アルバム「ONCE」の発売が目前ですが、世界中のNightwishファンにどう受け止められるのか期待している部分はありますか?Once

Oh my God……恐怖でぐちゃぐちゃになりそう。アハハ、冗談よ。勿論みんながどう考えるかを思うと少しゾッとするけど。この特別なアルバムはNightwishというアルバムを抜きにしても個人的にとても満足しているし嬉しく思っているから、とても興奮しているわ。他のメンバーにしても同じことを思っていると言わなければウソになってしまう。このアルバムには本当に自信があると言える。ファンのみんなも好きになってくれると思うし、出来るだけの努力の結果を入れられたから正当に評価してくれると思う。自分のヴォーカル・パートに100%満足していると誇らしく言えるのは個人的には今回が初めて。ONCEのわたしの声はとても自然でリラックスしていて、前作に少しあった強制されていたり人為的な部分は聞こえてこない。これが何年も前からNightwishのアルバムで実現しようとしてきたことよ。Nightwishの自分のヴォーカルに初めて気持ちよくなることが出来たし、おかげで本当にハッピーな気分。

ONCEの制作過程全体を考えたとき、個人的な最も大きなチャレンジは何でしたか? 今やTuomasのトレードマークともなってしまったようなNightwishの「常識破り」な曲の構成や歌詞を彼は決して軽んじません。彼の作るトリッキーで込み入った曲、あるいは詞にあなたのヴォーカル・パートをフィットさせるのに問題はありませんでしたか?

Hmm……とても難しい質問ね……ちょっと考えさせてね。えーと、スタジオに入って新曲のヴォーカル・パートをつけていくとき、いつもTuomasとどういうムードにしていくのかをまず話すようにしてるの。Tuomasが書いた曲を歌うための自分自身のルールになっていて。本当に自分のムードが頼りになる。少し怒りを感じたりフラストレーションを覚えたり攻撃的なムードでも、Tuomasの書いた曲をヘヴィにしてみたりアグレッシブにしていくのは自然だし、いつも簡単にできる。疲労を感じたりだるく感じて何も試すようなことがなさそうな曲だったら、まず何を話そう? 勿論Tuomasはもっとメローにしなければならない曲、もっとアグレッシブにしなければならない曲、そういう風に自分の歌い方を変えていかなければならない曲を書く。そういう意味ではムードがどうであれ自分のベストな部分を出していかなければ行けない。例えばONCEの9曲目に入っている“Ghost Love Score”、この曲は大きく構成が異なる3つの大きくパートに別れていて、わたしにとても多くを要求してきた。その3つのパートの中にも小さなパートがたくさんあって、あるムードからまた別のムードへと少しずつ歌うスタイルを変える必要があったから本当に大変だった。わたしの声が色々ある楽器の中でもただ一つの楽器で、際立たせていくのは本当にチャレンジであることをみんなには知っておいてもらいたい。

あなたの歌に関する限りにおいて妥協しなければならないところはありましたか? つまり、あなたの考えやヴォーカルについてのビジョンがTuomasが考えるその曲についての本来のものと食い違うようなことは?

フフフ……確かに彼のとの間でシリアスな口論があったわ。問題の曲は“The Siren”。その曲には詠唱しているような部分があるんだけど、……信じてくれても信じてくれないでも構わないけど……あれはわたしが作ったの! アハハハ! Tuomasもわたしも何かが足りないと考えていて、それが中近東風の音楽的なヴァイブだった。そして歌い始めた。わたしが楽しめるようなやり方で。今までにやったこともないちょっと東洋的な歌い方の真似をして、自分の声の感じをTuomasに向かって叫んだ。「ねぇ、Tuomas。こんな歌い方はどう?」すぐにTuomasから命令が来た。「それがこの曲の求めていたものだ……!! テープレコードはどこだ……マイクは……」 ハハハハ! 東洋的な感じのパートは本当に即興で自然に出てきて、どこからというわけでもなく自分でこんなことが作れる能力があったなんて、本当に驚いた。この曲を聴いたとき、裏で聞こえる声がわたしの声だなんてほとんどの人は気が付かないと思う。特定の部分だけだけど、とても誇りに思える。

このアルバムでとりわけ気に入っている曲はありますか? またその理由も。2ヶ月前のTuomasと話したとき、彼は“Creek Mary’s Blood”であると言っていました。特別な雰囲気がそこにはあるから、と……。

ちょうどそう言おうと思ってたわ。確かに特別な雰囲気がそこにはある! Tuomasがアルバムの中でもファイバリットだということは正直知らなかったわ。その曲について特別なことも話したことはないし、アルバムについてのインタビューも別々に受けていたから。でも今ONCEで一番気に入ってるのは確かにその曲ね。John “Two” Hawksのおかげで本当にユニークなフィーリングがある。この曲は息をのむほど美しくて、必要とされる全ての要素がそこにある。素適なオープニング、華々しいエンディング、「ロンドン・セッション・オーケストラ」の壮麗な演奏、全てのハーモニーがNightwishの音楽性そのもの。Johnの貢献はこの曲に対して本当にいいスパイスになってると思う。彼の貢献がなかったらリスナーに対して何の感慨ももたらさなかったでしょう。彼がゲスト参加してくれたのには本当に驚いたけど、おかげでこの曲が大好きになったわ。

そういえばJohn “Two” Hawksがフィンランドを訪れたそうですが、彼に会うチャンスはありましたか?

本当に残念だったけど、そのときはフィンランドにいなかったの。でもTuomasがメールで写真を見せてくれて彼のことをいっぱい話してくれたわ。直接会いたかったんだけど。

音楽的な要素に関して、いつもあなたが個人的にやろうとしていたことがONCEの曲で表すことが出来たと言えますか?

それはもう絶対に! 完全にそうだと言えるわ。そのヘヴィさでも、将来もっと聴いてみたいNightwishの要素。Emppuはスゴくヘヴィで切り刻むようなギターのリフを、わたしが聴く限りではいつも量産してたわ。本当にゾクゾクして、背筋が震えた。わたしもこういう感触を少しずつ好きになれるようになってきたということ。こういうヘヴィなサウンドをね。実はこういうのを望んできてはいたんだけど、前作にはそう言った部分が足りなかった。ONCEでようやく彼はそういう要素を入れることが出来たわ。このアルバムは色々な面で今までを超えることが出来たアルバムだと思う。つまり、ONCEで変化したのは壮大になってるということかしら。あまりに趣が変わっていてわたしも理解するのも大変なくらい。

Tuomasはこうも語っていました。スタジオ設備のキャパシティではみんなの能力全てを捕らえ、そして録音するには問題があったと。

アハハ……そうね。みんなの計画通りのものを全て入れるには無理がありすぎて、残念に思っていたわ。羨ましく思っていた、って訳でもないけど。エヘヘ。

Nightwishが世界中で有名になれたときのことははっきりと覚えていますよ。OCEANBORNという2枚目のアルバムのリリースの時です。Nightwishのキャリアの基礎となり、本物のオペラ歌手を擁するバンドとして注目を集め、それは間違いなくNightwishの看板となりました。メタルを聴くオーディエンスの間でとてつもない人気が出て、アルバムは世界中で数十万枚のセールスとなったために、メタル系のバンドとしてクールなコンセプトだと考える者も現れました。特にアメリカでも「とある女性がフロントのバンド……」が実際に現れて……。

お願いだから、それ以上言わなくてもいいわよ。アッハッハ……

正直に言って、どう思っていますか?……Evanescenceのことです。

ううーん……そうだなあ……Nightwishの音楽との関連がないことを指摘する必要があるとしても、いくらか肯定的に見てるわ。彼らはわたし達と比較してもかなり異なったことをしているし、ああいうバンドは時に適っていて、メディアが作り上げた本当の意味での「商品」により近いとも思う。巨大なプロモーション組織がバックにいたし、失敗するわけがないわ。時勢が彼らに適っていて……そして世界のビッグ・ネームになった。でも人々はミュージック・ビジネスに対して保守的にはならないだろうから、ポジディブなことだと思う。このビジネスは人々に心を開き、彼らと同じように他のバンドに対してもドアを開けて欲しい。音楽業界には常に閉ざされたドアがあって、音楽的にユニークなものを得るためには新人バンドがドアを開け放つ必要がある。例えばフィンランドにはとても際立ったサウンドを持つ「ゲート・クラッシャー」がいて、わたし達のようなサウンドを出すバンドはいない。他のバンドをコピーしたりサウンドを盗んだりすることなくNightwishよりも早くからユニークなサウンドを作り上げてきたフィンランドのバンドを考えてみて欲しい。これがフィンランドをメタル生産国として世界的に知らしめることになった一番の要因だと思う。わたしの覚えてる限りでは、フィンランドには才能が溢れ、成功したメタル・バンドが何年にもわたって存在し続けていたから、いったいフィンランド人はどんな水を飲んでるんだ? っていつも聞かれるわ。

ONCEに伴う実際のツアーが始まるよりも先に、一連の野外フェスティバルでプレイしますね。大きなものの一つにDynamo Open Air Festivalがオランダで6月5日に開催されますが、Nightwishとしてステージに立ったことはありましたっけ?

いいえ。一度も。色々あって参加を避けてきたフェスティバルもあるし。ここ数年はツアーのタイミングとかがフィットしなかったりしたかもしれない。だからそこへ行くのは今年が初めてで、プレイするのを本当に心待ちにしてるわ。大勢の観客がその後に始まる屋内のギグを始めるための素晴らしいフィーリングを与えてくれるから、野外フェスティバルは本当に重要だと思うの。

最近よくあなた達のウェブサイトをチェックしているんですが、アメリカ/カナダでも最初のツアーが行われて……

そう、わたし達の初めてのツアー。8月中旬から始まって、記憶が正しければこのアメリカ・ツアーでは15回くらいするのかしら。今までに一度ほどギグをやったけど、ツアーとしては本当に初めてのアメリカ・ツアーで、現地のNightwishファンのためにも本当にいいことだと思うわ。

アメリカ/カナダ・ツアーの後、再びヨーロッパに戻り、各国でツアーが続けられ……

うん、そうね。その後は秋にはまた南米へ向かって、チリ、アルゼンチン、ブラジルといった国々を回ることになる。

日本ツアーはどうなんですか? 例えば2005年中のツアーの可能性について話はありましたか?

春には日本ツアーの予定が……

では、興味深いパーティは既に「オフィシャルな」情報ということですか、それとも……!?

えっっ……(! ) 今はただそういう準備をしているところ、ということだけ言っておくわ。あと、これも「オフィシャルな」話かどうかは分からないけれど、オーストラリアでも4回のギグをブッキングしていて、これもわたし達にとってクールだわ。日本ツアーに関しては、同じように韓国、そして恐らく他のアジアの国々も2005年春に回ることが分かっている。それ以上は分からないけど。

Angels Fall FirstTarja、今回このように話す機会を持てたので、折角ですから今までのスタジオ・アルバムについて伺えますか。まずは7年前、正確には1997年にレコーディングされたANGELS FALL FIRSTからです。

まず最初に言っておかなければならないのは、ヘヴィ・メタルのレコードで歌を歌うというのは本当に新しい経験だったということね。このようなタイプの音楽の経験は全くなかった。受けていたレッスンもクラシカルなものだったからとても奇妙な感じがしていた。Nightwish最初のアルバムとしてスタジオで歌っているときも自分が何をやっているのか確信を持つことが出来なかった。アルバム全曲を歌うことが出来るのかどうか、本当に半信半疑だったのよ。正直に言って、迷子になっていた。ヘヘ。でも幸いなことにいま思い返してみても、全てがうまくいったわ。かつてちっぽけだったクラシック音楽を学ぶ学生が、アルバム1枚でなんとか歌い、どうにか成功への道を開いた、という。クラシック音楽を学んだ女性のヴォーカリストがヘヴィ・メタルのアルバムで歌うというのは、とてもユニークなことだったんだと思う。

OceanbornそしてOCEANBORN、Nightwishのアルバム全体を考えても大きな成功を収めたアルバムですが……。

ム……! 個人的にこれは本当に荷が重くて難しいアルバムだった。思い出すだけでもいやになるわ、ハハ。OCEANBORNの頃を考えると、個人的な意見だけどTuomasはわたしのようなボーカルに合うような曲はまだ作ることが出来ていなかった。だから歌うのがすごく大変だったし、困難なことだった。彼はわたしの声域も把握していなかったわ。ヴォーカルだってギターやドラムスと同様に楽器の一種なんだから、そのヴォーカリストの声域に気を配るのは本当に重要なことよ。勿論いまではTuomasもわたしのヴォーカルに合わせられるような曲の作り方がきちんと分かっているから、とても気持ちよく歌える。わたしのヴォーカルに関する限り、彼が書く曲をどのようにわたしが歌えるものにするかを知ることが出来たから、最近彼もNightwishの曲を書くのは実は簡単なんだって認めてたわ。OCEANBORNでわたしが歌うとき、床に突っ伏して泣いたのを覚えている。で、みんなが大声で言うの、「歌えよ、ちくしょう!」って(笑) このアルバムで歌うのは本当にタフな経験だったけど、OCEANBORNの歌はかなり複雑で分かりづらい構造をしていた。わたし達全員にとっても。Nightwishの音楽という範囲でも、現在に比べれば自分自身このときはスキルも足りなかったし。大きな違いがあったのが分かるわ。もしいつかOCEANBORNのヴォーカルを歌い直すことが出来たら、ずっと素晴らしいものになると思う。みんなそれを聴いて、わたしがどれだけ歌いこなせるようになっているかを分かってくれると思う。でも当時はわたしもまだ学校で学んでいるところだったし、今やってるように自分の声を訓練できる大きなチャンスもなかった。最初のアルバムと比べればわたしもシンガーとして成長していてる。自分に自信も持てたし、ヨーロッパのツアーも成功し、Nightwishとして初の南米ツアーもすることが出来た。多くの経験を得たし、バンドと一緒に音楽をやっていく自信も得た。バンド全体でも自分のやっていた音楽を信じ、安心することが出来た。OCEANBORNによって、わたし達が本当に壮麗な音楽、全てに渡ってファンタスティックなものをやっていると多くの人が考えてくれるようになった。みんなに「Wow!」って思わせることが出来たのよ。

WishmasterそしてWISHMASTER……

んー、OCEANBORNがみんなに対して「Wow!」って思わせることが出来たものであるならば、WISHMASTERの時期はバンド内部に対して別の問題が爆発してしまった時ね。アルバムに伴うものすごいツアーで消耗しきってしまって、お互いの顔を見るのも疲れるようになってしまった。WISHMASTERのレコーディングに入るときに頂点に達してしまって、何もかも上手く行かなくなってしまったようにわたし達全員が考えていた。全てのトラブルの元はこのアルバムのスタジオ・セッションまでストレスがそのままだったということね。でもどうにかレコーディングが終わる頃にはいやな感情はなくなっていたし、おかげでギグもまた気持ちよく続けることが出来た。WISHMASTERのレコーディング・セッションのいやな感情のおかげで、音楽的な面でも詞の面でもひどく暗くて恐ろしいアルバムというのがわたしの意見ね

Century ChildCENTURY CHILD……

簡単に言うと、個人的には全ての面でとても素晴らしいアルバムだと思っているし、最新アルバムが音楽的……あるいはそれ以上になろうとした指針も示しているとも思うわ! Marcoとヴォーカル・パートを分け合った最初のアルバムね。

それでは、ニュー・アルバムONCEについてはどうです? この最新作について数語でまとめていただけますか?

新しい始まり、わたし達の生命。的確にまとめるならこうね。以前のアルバム全ての要素を含んだわたし達の新しい生命とも言えるかもしれない。以前のアルバム全ての要素がONCEでアップデートされていて、わたし達によりフィットするようになってきている。ONCEの曲を聴くとき、多くの要素がONCEには入っている、わたしの耳にはOCEANBORNの音にも聞こえる、と何度も考えていた。あるいは他の要素はWISHMASTERのようにも聞こえる。わたし達がスタジオでONCEを聴いていたとき、それらの要素が入っていることにわたしは気づいた。Nightwishが残してきたこれまでの音楽の歴史に通じていると強く思ったの。ONCEはわたし達全員の新しい生命のようなものだと本当に感じている。次のアルバムでこれを超えていかなければ行けないと考えると、正直に言って本当に恐ろしい!

Metal-Rules.com向けに私と話す機会を持っていただいたことに感謝したいと思います。素晴らしいお話、ありがとうございました。とても楽しかったです。

こちらこそありがとう。とてもいい話が出来たわ!

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